【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー




思わず謝ってしまいそうになったのは、そう言った彼の顔が、泣きそうだったから。


見てるこっちまで、苦しくなるような。


「あ、の」

「なんでこんな、届かねーの……。俺は、お前のことが本気で……っ!」


ぎゅう、と私の手首を掴む木村君の力が強まって、反射的に顔を顰めたとき。


「おーい、木村ぁ」


廊下の向こうから歩いてきた男の子が、木村君の事を呼んで。


「ちょっと確認したいことがあんだけどさー」

「俺今それどころじゃ……っておい!」


私は、木村君の力が緩んだその一瞬の隙に逃げ出した。


「待てよ!」と怒った声が背中から聞こえてきたけど、しばらく経つとそれも無くなって。


「あー、沢森さんお帰り〜着物似合うね……って、どうしたの!?汗だく!」


自分の教室に帰った時には、そうクラスの子に仰天されるくらい疲弊していた。


──木村君、傷ついた顔してた。


なんで木村君が、傷付くの?私の事なんか、ただの遊びだったくせに。



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