【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
嫌だ、聞きたくない。だって、どうせ。
「あなた、木村君の事どう思ってるの?」
──ほら、碌でもない事なんだから。
一瞬、周りの音が全て消えた。
生徒たちの話し声も、廊下を歩く靴の音も、外の木々のざわめきも、全部、全部。
ただ、滑川さんの声だけが鮮明に届いて、私の思考を奪い去った。
「ど、どう、って……」
やっと正気に戻って、辺りの雑音が聞こえるようになった時には、喉がカラカラに乾いていて。
嫌な汗が、背筋を伝う。
なんでそんなこと言ってくるのか。
なんでそんなこと聞いてくるのか。
ぐるぐると思考がめぐる。
木村君をどう思ってるのかなんて、そんなの──。
「どうとも、思ってないです」
「へえ、本当に?」