【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
繋がれていた手は、もう離れてる。
「……あのさ」
「……はい」
「沢森が忘れたいっていうなら、それでもいい」
それが、何のことを言ってるのかはすぐにわかった。
── 『……過去の事は、忘れました』
我ながらいくらなんでも酷い誤魔化し方だったと思う。
ごめんなさい、といいたいのに、言葉が上手くつっかえて出てこないし。
すると、木村君がくるりと私の方を振り向いて。
「でも、俺は忘れない」
はっきりとした意志のある瞳で、そう言った。
「沢森と過ごした事も、話したことも絶対忘れないからな」
無かった事になんかさせるか。