【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
心音*.゜
「あれ、そんな慌ててどうしたんだよ理貴」
放課後を知らせるチャイムがなったと同時に、コートを羽織り、手当たり次第に鞄に教材を詰め込む俺に、昴が首を傾げる。
俺はマフラーをぐるぐる巻きにしながら、小声で昴に答えた。
「しっ!大声だすと見つかるだろ!」
「は?見つかるって誰に」
「いいから!それはまた後で!とにかく俺、今日は部活出ないから、適当に理由作って誤魔化し──」
誤魔化しといてくんねえ?という言葉は、紡がれることなく消えた。
「きーむーらぁー」
「やっべ……!」
教室のドアから、ドスの効いた声が響いてきて思わず目を見開く。
早く逃げなければという本能でそのまま、そいつのいる逆側のドアから逃げようとしたけど──。
「バーカ。俺から逃げられると思ってんのか?あ?」
瞬間移動でもしたんじゃないのかというスピードでそいつは走ってきて、俺はマフラーを後ろから引っ張られて捕まった。