【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
わかってる。
わざと触れたわけじゃなくて、触れてしまったのは偶然なんだってこと。
なのに。
かあっ、と熱くなっていく身体を止められない。
真っ赤になってるのがわかったから恥ずかしくて顔をそらそうとしたのに、もう手遅れで。
「……それさ、俺の事誘ってんの?」
気付けば、木村君の香りに包まれていた。
ぎゅう、と包まれる温もり。
安心感があって、それでいて懐かしい、匂い。
ドキドキと煩い心臓の音が、耳鳴りのように響く。
止まれ、鎮まれ、と何度も念じてみても、勝手に駆け足で刻まれてく鼓動に腹が立つ。
ドキドキなんか、したくないのに。
どうにか木村君から離れようとするけど、思いの外強い力で拘束されていて、抜け出せなくて。
木村君の吐息が、耳朶に触れる。
「なあ、沢森聞いて」