【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
ふと、真剣味を帯びた声が落とされて、私は抵抗する動きを止めた。
いつもと様子の違う木村君に、首を傾げる。
「聞くって……」
「あの時の、こと」
あの時、がなんのことを指さしているのかすぐにわかった。
私が木村君に裏切られたと知った、バレンタイン。
その時のことを思い出しただけで、今まで顔が熱かったのが嘘のように、サーっと血の気が引いていく。
その瞬間陥るのは、聞きたくない、逃げたい、という負の感情。
「やっ……!」
思わずドン、と木村君を突き飛ばした私の手首を木村君は掴んだ。
「逃げんな、聞け!」
強く言い付けられて、思わず行動を止める。
「頼むから……誤解、解かせろよ」
誤解って何?
あの時のことはもう、思い出したくない。