【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
目線だけ母さんに寄越してそう聞けば、にっこりと母さんが笑う。
こういう時の嫌な予感ほど当たるものはない。
「おつかい、行ってきて」
「……人の話聞いてた?」
寒いから外出たくないって言ったんだけど。
だけどこの家では母さんが絶対王者。何人たりとも逆らえない。
俺は仕方なく財布を受け取り、ジャンパーを羽織って外に出た。
ドアを開けると、残酷な程の冷気が突き刺さる。
……なんでこんな日にさみしくパシリにされなきゃなんねーんだか。
はあ、とため息をつきながらスーパーまでの道を歩く。
街はどこもかしこもキラキラのイルミネーションばかりで、どこからか聞こえてくるクリスマスソングが途絶えない。
沢森も今頃──。
俺じゃないほかの男の隣にいるであろう沢森の姿を想像して、ぶるりと首を左右に振る。