【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
あーもう、嫌な事思い出したわ。
苦虫を噛み潰したような顔になりながら、歩道橋の階段を昇っていく。
その時、「うわあっ!」という子供の声がして。
「あぶね……っ!」
上の方で、子供が階段を踏み外したのが見えた。
スローモーションのように落下してくる小さな背中に、俺はほとんど反射で手を伸ばして。
その温もりをしっかり受け止めたけど、衝撃は支えきれなくて、──俺の身体も、傾く。
ぐるりと反転する視界に吸い込まれていく風景。
そして、何かを打ち付けた様な鈍い音と強烈な頭の痛みを最後に、俺の意識はぷつりと途絶えた。