【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
ずっと見たかったけど1人では行く勇気のなかった映画を図らずも観れることになって、テンションが少し上がる。
それに、映画を観てる間なら、それだけに集中できるから。
……余計なことを考えなくて済むから、気が楽なの。
だってさ、言えないよ。
渓斗君と居るのが、少し息苦しいなんて。
……言えない。
「……恵梨、疲れた?」
映画を観終わり、近くのカフェで休憩していると不意に真面目な顔をした渓斗君にそう訊かれて、思わず表情が強ばる。
マグカップを持つ指先が震えて、水面が揺らいだ。
「え?な、何で?」
「んー……なんか今日、いつもと違うから」
さすがというか、なんというか。
全く会ってなかったのに、そういうのって分かるものなんだね。
そしてそれを悟らせてしまった自分が憎い。
「……ごめんね」
「いや、謝ることないけどさ!」