【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
可愛いよ、と言ってくれる渓斗君は、ふとその微笑みを消して。
熱っぽさを含んだ、真剣な眼差しになった。
ドクリと旨が騒ぐ。
「……恵梨」
この雰囲気は、よく知ってる。この後どうなるのかも。
渓人君の顔がどんどん近づいてきて、いつもなら私も目を閉じるのに。
「……ダメ、だよ」
私はそれが出来なくて、もう少しで触れ合うところだった渓人君の唇を、両手で塞いだ。
目を閉じていた渓人君がゆっくりと瞼を開く。
その目を見ることができなくて、私は渓人君の口を塞いだ自分の手に目を落としていた。
「こんな、外じゃ、恥ずかしいよ」
苦し紛れの言い訳。
ゆっくりと手を離せば、渓人君は残念そうに笑って「だよな、ごめん」と謝った。
……謝らないで。
悪いのは私なの。避けられたくせに、あの日キスを避けれなかったから勝手に罪悪感なんか抱いて──。
謝るのは、私の方。