【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー





俺はどこか眺めるようにそれを見つめていて。


「……い……おい、理貴!」


少し困惑したように呼ばれた名前でハッと我に返ったときにはもう、沢森の姿は居なくなっていた。


言い様のない喪失感が胸のなかを渦巻く。


ふとさっきまで沢森が立っていた場所に目を落とすと、どうやら沢森が落としたらしい、可愛く包装された包みが落ちていて。


落とした衝撃で開いていた箱から飛び出していたのは、砕けて少し瞑れたチョコレートだった。


それを見て、思い出す。今日がバレンタインデーだったということに。


そして昨日、沢森がどこか落ち着かない様子で俺に、甘いものは好きかと訊ねてきたことを思い出した。


……そういう、ことだったのか。




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