【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
そう決めた俺はその日、沢森の家の前で沢森を待ち伏せていた。
十分ほど待っていると、沢森が向こうから歩いてくるのが見えた。
沢森がふと、俺を見つけて立ち止まる。
「……木村君?」
「よお……」
「こんなところでどうしたんですか?」
ちらり、と隣家──俺の家を見やってからそう言う沢森。
「沢森のこと、待ってた」
「……え?」
びくり、と肩を震わせる沢森。
「沢森、聞いて。あの日、バレンタインのあの日──」
「──聞きたくないですっ!」
バレンタインのあの日の誤解を解こうとすれば、耳を塞いだ沢森。
ぎゅ、と目を固く瞑った沢森は、カタカタと小さく震えていた。