【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー




そう決めた俺はその日、沢森の家の前で沢森を待ち伏せていた。


十分ほど待っていると、沢森が向こうから歩いてくるのが見えた。


沢森がふと、俺を見つけて立ち止まる。


「……木村君?」

「よお……」

「こんなところでどうしたんですか?」


ちらり、と隣家──俺の家を見やってからそう言う沢森。


「沢森のこと、待ってた」

「……え?」


びくり、と肩を震わせる沢森。


「沢森、聞いて。あの日、バレンタインのあの日──」

「──聞きたくないですっ!」

バレンタインのあの日の誤解を解こうとすれば、耳を塞いだ沢森。


ぎゅ、と目を固く瞑った沢森は、カタカタと小さく震えていた。




< 70 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop