【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
恋人*.゜
「おーい。そんなボーッとしてるとちゅーすんぞ」
突然目の前に現れた昴が、そんな事を言うから、俺は反射的に昴を殴りそうになった。
俺が降り下ろした拳を、「うわぁ!!」と悲鳴を上げながら間一髪で避けた昴は、憎々しげに俺を見た。
「おい!いきなり何すんだよ!」
「悪い。キモかったから咄嗟に………」
「ひでえ!!つか本当にするわけないだろ!お前が明日から夏休みだってのに浮かない顔でボーッとしてるから元気付けようとしたんだよ!」
──そう。明日から俺達は高校最初の夏休み。
今日は終業式で、体育館で式を終えた俺達は、教室に戻って、連絡事項などを聞いていた。
「つかお前、ここ最近どうしたんだよ?」
「あ?何がだよ」
「なんか、心ここに在らずって感じでさー」
……心ここに在らず、か。
確かに最近、ボーッとすることが多くなったことは自覚していた。
理由はわかってる。
原因は勿論、沢森だ。