【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
沢森は自分の手元に目を落としながら微動だにしない。
「沢森、無視すんなよ」
「無視、なんて……」
か細い声で紡がれた抗議の声に、何日ぶりに沢森の声を聞いただろうかと思う。
「突然あんなこと言ったのは悪いと思ってる。でも──」
俺は本気でお前が好きなんだよ。──そういおうとした瞬間、沢森がバッ!とこちらを向いて、俺の口を両手の掌で塞いだ。
久しぶりにまともにみた沢森は、焦ったような、恥ずかしそうな顔をしていて。思わずそのまま抱きしめてしまいそうになった。
「ま、待って……。それ、ここでお話するような事じゃないですから……!」
「……だってこうでもしねーと、お前俺と目も合わさないじゃん」
強行突破するしかないだろ?
「……それは……」
「ここで話されたくないなら、一緒に帰ろうぜ」
「!?」