【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
驚いたように顔を上げた沢森。
「何?この後なんか用事あんの?」
「な、無いですけど……」
「じゃあ別にいいよな?家も隣だし、不都合な事なんかねえし」
「ちょ、ちょっと木村君……」
「早くしねーと無理矢理手え繋いで帰るけど?」
じろ、と沢森を見下ろせば、渋々、というように沢森が肩に鞄をかける。
大分強引なことは自分でもわかってる。
──それでもいいから、沢森と話すきっかけが欲しかった。
沢森の隣に、いたかった。
しかしどうにも話を切り出すことが出来ずに、俺たちは無言のまま家の近くまで来てしまった。
……何やってんだよ俺。
心の中で自分に喝を入れてから、沢森の方を向いて立ち止まれば、沢森も立ち止まった。
「沢森、俺──」
「──恵梨!」