【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
そして、意を決して俺が話しかけようとしたその瞬間、沢森を呼び止めた誰かの声。
俺と沢森が声のした方を向けば、そこには爽やかな笑顔で手を振る俺の知らない男が立っていた。
歳は同じくらいだろうか。癖のないさらさらな黒髪と、屈託ない笑顔。好青年、という言葉をそのまま当て嵌めたような奴。
……誰だ?
すると沢森が驚いたように目をみはってから
「渓斗(けいと)君!!」
と、中学の頃に俺に見せてくれていたあの笑顔でそいつに駆け寄った。
すうっ、と身体が冷えていく。
ぐるぐると渦巻く思考は、真っ黒に俺を包み込んで、侵食してきて。
誰だよ、そいつ。
なんでそんな笑顔なんか向けてんだよ。