【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
「……お幸せに」
見てるこっちが苦しくなるような顔で、そう呟いた木村君は、そのまま家へと入っていった。
胸の前で組んでいた手を、ぎゅ、と握り締める。
どうしてそんな悲しそうな顔をするの?
私のことなんかどうでもいいくせに。
退屈だから私でまた遊ぼうと思ってただけでしょう?
だからまた、本気を装って、私に告白しようとしてただけでしょう?
それなら、どうして──。
「……もしかして今のが、恵梨が言ってた、恵梨のこと遊んだって男?」
普段聞くよりも少し低い声に顔を上げれば、渓斗君が、まるで獲物を狩るような目つきで、木村君が消えていった方向を見つめていた。
そういえば、こんな渓斗君の鋭い目を見るのは、あの日以来だな、と、思考を巡らせた──……