【完】恋愛距離*.゜ーボクラノキョリー
そんな中でも、特に私のことを気にかけてくれたのが渓斗君だった。
性格も良くて、カッコイイ渓斗君は、クラスの中心的な存在で。
渓斗君が居るだけでクラスが明るくなったし、皆が笑顔になった。──勿論、私も。
渓斗君も数年前に九州に来たばかりのようで、方言に囲まれて不安だらけだった私に、同じく関東生まれの渓斗君はとても心強い人だった。
そんな方言如きで、なんて笑われるかもしれないけど、自分だけ別の言葉を使うというのは、なかなか心細いし、いたたまれなくなるものだった。
渓斗君とはよく話すようになって、私も段々と心を開くようになった。
お互いを名前で呼び合うようになって、渓斗君は気の合う友達のような存在で。
でも渓斗君は、違ったようで──。
五月の最初の日、私は渓斗君に誘われて、放課後二人で遊んでいた。
今考えてみれば、渓斗君はいつもよりも静かで、緊張してる面持ちだったのを覚えている。
「……恵梨」
「渓斗君?どうかした?」
そろそろ帰ろうか、と声をかけようとした所で呼び止められて、渓斗君の方を振り向いて──息を呑んだ。
渓斗君が、あまりに真剣な眼差しで私の事を見つめていたから。
だから私も、目を逸らすことが出来なかった。
「渓斗、くん……?」
「恵梨……茶化さないで聞いてほしいんだけど……」
渓斗君は、そこで言葉を止めると、何かを鎮めるように深呼吸をした。
「好きだ」