ダウトゲーム【更新中】
「そもそも、なんでそんなに勝負したい訳?」


向かいに座る右崎の目を見つめて問いただす。


垂れ目でもつり目でもない、

絶妙な形のそれは

透き通った茶色い硝子玉のような瞳を際立たせていて

思わず吸い込まれそうになる。

その瞳には体温というものが感じられなくて、

冷んやりとした冷気を纏っていて……

きっとこの感じが、

日常の右崎特有の気怠い空気の正体なのだろう

そう、ふと思った。



そんな冷たい瞳を携えて、

こんな風に彼は淡々と口から言葉を零す。



「ただひたすら出される問題解いて、答案が返ってきて、ああ、今回はこんなもんか。はい、終わりってつまんないじゃん。せっかく点数っていう分かりやすい数値が出るんだから、それを使って競い合いたくなるのは当然のことじゃない?っていうかその方がやりがいあって面白くない?」


「……御託並べてないで簡潔に、どうぞ」


「まあ、要するに暇つぶしだよね。」


「……」



しかしながら

ここ数週間、彼と一緒にいてわかったことは

だからといって

この男が

心まで冷徹なわけではないということ。

冗談も言えば、嫌味も言うし、

談笑だってすれば、

こんな詭弁だって言うのである。



ねえ、勝負しようよー。

と棒読みでやる気なく駄々をこね始めた右崎に溜息をこぼす。

まあ、得意科目だけでいいのなら……勝てない見込みがないわけではない。
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