別れたオトコと会う時は
『ハナ、悪いな。』


声がして、アイツがわたしの隣に腰掛けた。


『具合、まだ悪い?』


わたしは心配そうに顔色を覗き込む。


『…あんまり顔、近づけるなよ。』


『え?』


『ギュッて、したくなる。』


一ハナ、ギュッとしたい一


昔の口癖をそのまま、アイツは声に出した。



突然、昔のことが思い出されてみるみる顔を赤く染めるわたしを見て、アイツはポツリと言った。


『やっぱり、ハナは変わらないな。』


大きい音を立てる心臓の音。


沈黙の中、わたしは自分の心臓の音がアイツに聞こえてしまわないか、考えていた。

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