別れたオトコと会う時は
アイツとわたしはエレベーターを降りて、外に出た。


優しい雨を降らす空を見上げる。







『気をつけて帰れよ。』


アイツが、わたしの手を引き、自分の傘を握らせた。


『持ってけよ。』


『でも…』


借りても返せない、と言おうとしたわたしを遮るように、


『やるよ。』


わたしの手に傘を握らせたアイツの手に力が込もった。


『…ありがとう。』


わたしは素直に傘を受け取ると、真っ直ぐアイツを見た。


『ねえ…』


アイツに聞きたいことがひとつだけあったことを、わたしは思い出していた。



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