別れたオトコと会う時は
「ある愛の終わり」




いつもの情事の後で、女は、男の疲れた背中を見つめる。


仕事、家庭、そしてわたし一。


その肩に背負うものの重さに、女は目を伏せる。


一仕事も家庭も捨てて、側にいて欲しい一


声にならない言葉をまた飲み込み、その塊は女の心を縛り付ける。


そう…がんじがらめに一


男が吐く煙草の煙を見つめる。



ゆらゆらと揺れながら消えていく紫色の煙に、自分達の未来を重ねる。


時計をチラと見て、帰り仕度をする、愛しい男。


一帰らないで一


その言葉の変わりに、女は言う。


『カギ、置いていって』




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