別れたオトコと会う時は
急に抱きしめられ、わたしは息を飲んだ。


『ハナ。産んでくれ。』


身動き出来ないまま、わたしはアイツの言葉を聞いていた。


『結婚しよう。ハナを離したくない。』


『…待って。』


わたしは、アイツの腕から擦り抜けようとした。


『待てない。』


アイツがなお強くわたしを抱きしめる。


『苦しいよ…。』


その一言で、ハッとしたようにアイツの手から力が抜ける。


『話、したい。』


わたしは今度こそ、アイツの腕から擦り抜けた。





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