別れたオトコと会う時は
『ごめんなさい…。』


わたしは、アイツに言った。


『わたしたち、別れよ?』


精一杯の笑顔を作ったが、今にも涙が零れ落ちそうだった。


いつも引き止めてくれたアイツは、もう何も言わなかった。


『…二人とも、帰って。』


涙が零れないようにわたしは歩き出すと、家のドアに手をかけそう言った。


アイツが何か言ったような気もしたが、涙で霞んだ鍵穴に鍵を入れるのが精一杯で一一


わたしは、何も聞こえないまま、ドアを閉めた。


それきり、だった。


アイツとの2度めの別れ一。


わたしが24歳の、冬だった。



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