ビターな彼氏の甘い誘惑
「はぁ。
とりあえず、
あの、帰っていいデスカ?
これから、飲み会なんで・・・」
失礼しまーすなんて言いながら、
横をそっと通り抜けようとしたら、
「ま、待って!」
ぐいっと腕をつかまれて
ちょっと
体勢を崩して、
彼女にもたれるように倒れた。
「きゃっ。
だ、大丈夫ですか?
ごめんなさい、嶋野さん・・・」
「大丈夫・・・って、ご、ごめんなさい!!
あのっ、加藤さんっ!!」
「・・・え?」
彼女の持っていたポーチが散乱していて
メイク道具から筆記用具・・・その中に、
カミソリが。
何かのタイミングで
カバーが外れたんだろうなぁ
その凶器は 見事に私の腕をざっくりと切って
落ちている。
「あーー。」
血が、ぶくぅっと流れる。
こういうのって見ると痛いんだよなぁ。
「いえ、大丈夫ですよ?」
「でも、でもっ。」
うろたえる嶋野さん。
大きな黒い目でキラキラ。香川君が「ななちゃんは、癒しなんだよー!」とか言ってたのがよくわかる。
年上だけど、おんなじ女の子だけど、かわいいなぁなんて思っちゃう。