冷たいアイツ

「班長点呼!!」


集合時間になって、整列している。
あたしは、点呼をして、報告すると
またボーっとしていた。


「それでは、ここからはコース別行動になります」



その一声で、いっせいに動き出した。
みんな、バスに向かう。


あたしは、最後の方で行こうと、立ち止まっていた。


「渉、行こうぜ」


そこに、オチから声を掛けられた。

オチの隣には、タケ…。


「おぅ」


あたしは、チャンスだと思って、オチと一緒にバスに向かう。

でも、途中、オチはほかの男子と戯れだして、あたしとタケが二人になった。



「なぁ、タケ…」「おはよ」



久しぶりのタケの声。

あたしは、フッと涙腺が緩んで、涙がでた。

「タ…ケ…」



その光景を見て、タケは焦ってるし、
サトは笑ってるし。



鷹田聡(タカダ サト)。
去年からの唯一の相談相手。
身長はそれほど高くなくて、
別にかっこいいわけでもない。
いわゆる普通の男の子。



「タケ、泣かしちゃ駄目じゃん!!」


サトは、あたしたちを見て笑ってる。

「ごめん、悪かったよ」



タケは必死で謝る始末。

もう、可笑しくて。



あたしは、笑いがこみ上げてきた。

「ははっ」



「楽しもうぜ」「楽しもうね」


あたしとタケの声が重なる。

二人で顔を見合わせて笑った。





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