冷たいアイツ
「タ…ケ…?」
かすかに聞こえた、小さな声。
ベッドの上ではうっすらと目を開けた渉が、こちらを見ていた。
「渉!!!」
俺は、呼びかけた。
「とりあえず、病室に運びます」
そう言って、看護師は渉を連れて行った。
そこからは、よく覚えていない。
どうやって家に帰ったのかとか、授業を受けていたのかとか。
学校に行っていた記憶すらなかった。
ただ、学校では、いつも通りに振舞っていたのは、うっすらと覚えている。
篠が、心配して俺のところにずっといたのは、言うまでもないだろう。
一週間位して、俺の元に一本の電話がかかってきた。
俺は、滅多に電話はしなくて、誰かは見当が付かなかった。
一体誰だ??
『…もしもし』
それは、微妙に違ったけど、
俺の聞き覚えのある声で、最近、耳にすることの無かった声。
「はい」
『あの…奈多平と言います。武君にお電話代わっていただけますか?』
「はい。武ですが…渉か??」
『あっ!!うん!!久しぶりだね、タケ。』
「あぁ」
『ごめん、忙しかった??』
「ううん」
『…どうしたの??』
俺は、震えている自分の声に、
正直驚いていた。