ぶっかけ丼


雅樹の様子がおかしいなって思いだしたのは付き合って3ヶ月くらいのとき。


その頃はもう冬休み明けで、
三年生は学校にくる日数がとっても少なくなっていた。

雅樹はまだ自動車免許を取っていなかったので、
自車校の日々が続いてなかなか会えなかった。


会えなくなればなるほど
私の気持ちは高まり、
一方で雅樹のほうはきっと冷めだしていた。


それはLINEのやりとりでなんとなく察知した。

前よりハートが少なくなって、
なんとなく返事が軽い。
テキトーくさくて、
寝る前に返事をせず
朝になってから何事もないように返事が来る。
前だったら、今何をしているのかわかっていたけど
それすらもわからない。

携帯をみても返事が来てない、
なんてことが多々あって
自分ばっかり空回りしてて
それが嫌で、わざと返事を遅くしてたりした。




そして、遂にその日が来た。

久々の雅樹の家だった。

二人してベットにいたけど、
明らかに雅樹の様子がおかしい。

こっちに顔を向けない。

気になって、
『雅樹~??』
って呼びかけてみたけど

『ん~』
って、なんだか嫌々って感じだった。

え、なに、何、怖い。

『ねえ、雅樹どうしたの?怒ってるの?』

『怒ってはいない』

『じゃぁなに?』

『ん~』

『ねぇ、言ってくれなきゃわかんない』

『ん~』

ねぇ、なんで?
こんなに変わっちゃうの?

『ねぇ、雅樹こっち見てちゃんと言って!』

『やだ』

『なんで?ねえ?なんなの?ねえ?雅樹』




物だらけの狭い部屋に
テレビの音だけが響いていて




『……冷めた』




愛しい人から
聞きたくない言葉が聞こえてきた。


体が固まった。
どう反応していいかわからなかった。
知らないうちに泣いていて

『なんで?いつから?』

発する言葉は頭の中より冷静で
きっとこれは何となく予感してたから。

『ん~わかんない』

『ねぇ、やだ、わけわかんない、杏理まだ好きなままだよ…』

『うん、知ってる』

『もう元に戻らないの?』

『わからない』







終わりたくなかった。

でも、さよならしか
選択肢がなくて。


2月。
バレンタインを目の前に
雅樹と別れました。

雅樹のために用意したプレゼントや
何を作ろうか迷って
たくさん試作したお菓子を見ると
やるせない気持ちが湧いてきて
何も手をつけれなかった。

抜け殻みたいだった。

この人以外考えられないって思うような恋は
今回が初めてだったから、
失恋から立ち直る方法も見つからなかった。


『ドライブに連れていくね』
『杏理と離れたくないよ』
『一緒にいろんなとこ行こ』
『杏理〜、遠距離乗り越えような』
『かわいいやつ~』
『杏理、ごめんごめん』

『杏理、大好き』



あなたの言葉は
嘘だったの?


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