花と闇

「そこまで突き止めるとは、早いな。」
「……それなりの伝で調べている故。」
ヴォルフラムは眉を寄せた。
（いろんな奴らを脅して得たに違いない。）
クラウジアは心の中で確信した。
「その付近で、“桃色の髪の赤いリボンをした少女を目撃した”とも、情報がある。……これは、役人からの情報だ。」
「シャルドネ、といったか。」
「あぁ。」
「嘘は吐かないような奴だな。疑い深いが。」
クラウジアは冷静にそう評する。
「どう思う？」
ヴォルフラムはクラウジアを見る。
「……桃色の髪は珍しいほうだが、居ないわけでもないだろう。気にし過ぎだ。」
「しかし、目撃されたのは三ヶ月前だ。」
「シエンが此処に来なくなったのも、そのくらい……か？」
シエリアを愛称で呼び、日付感覚が曖昧な様子でクラウジアは首を傾げてカレンダーを見た。
「魔女とやらが奴とは考えにくい。確かに、以前、ひとの生気を吸収したことはあったが」
「理由もなく、ひとを殺すような奴じゃない。」
ヴォルフラムの言葉の続きをクラウジアが言う。
「あの子の家に、行ってみよう。」
クラウジアはヴォルフラムの裾を掴む。
「珍しく、積極的だな。」
そう言うと、ヴォルフラムはクラウジアの手を引いて家を出た。

シエリアの家にヒールが高い靴を履いた男性がいる。
「シャルドネ」
クラウジアが警戒する。
「これはこれは……」
シャルドネはぺこりとお辞儀をした。
「役人が何の用だ。」
「解っているとは思うが？」
ヴォルフラムにシャルドネはそう言って家を見る。
「気配もない。ノックしてもチャイムを鳴らしても、反応がない。……生憎、勝手に侵入するわけにもいかないからな。どうするか。」
「知るか。」
“ガチャッ”
ヴォルフラムは思案するシャルドネを無視して中に入った。
「おい。仮にも女の家だぞ。」
「それにしては、鍵も掛けずに無用心だな。」
クラウジアにヴォルフラムが言う。
誰一人居ないだけでなく、気配も、住んでいたという雰囲気もない。
風呂場をクラウジアが見たが、使った形跡はあるものの、水気はない。
（風呂は、毎日使うはず……）
クラウジアは不審に思った。
以前来た時は、掃除は一応しているようで、埃はなかったが、少し埃っぽい。
「やはり、三ヶ月以上家を出ているのか？」
ヴォルフラムは疑問に思う。
二階に上がり、シエリアの部屋に行く。