花と闇
扉には“シエリア”と名前が入ったプレートがあった。
その部屋は可愛らしく、生活感を感じない他の部屋とはまるで違う。
天蓋付きのベットがあり、窓が空いている。
「攫われた、とも考えられそうだな。」
シャルドネが腕を組んで考えた。
三人は部屋を見渡す。
だが、荒らされた様子はない。
「攫われた、としたら……寝ている間か。」
「だが、布団は綺麗に元通りになっている。」
クラウジアは不審そうに布団を見た。
「……滅びの魔女が現れるとされる時刻に街で見張りをしてみるか。」
「そうだな。」
シャルドネは頷いた。
「こちらは公務がある。二人でも、問題ないな?」
そう言って、ヴォルフラムを挑発した。
「無論だ。」
ヴォルフラムではなく、クラウジアが答える。
「そういう訳だ。」
ヴォルフラムは満足そうに頷くと、クラウジアを連れて去った。

——深夜、隣町に二人は行った。
「本当に来るのか?」
「来なければ、手掛かりが出るまで此処を捜索するしかない。屋敷に行くのも、疑うべき証拠が不十分だ。」
ヴォルフラムはそう言いながら、辺りを見回した。
噂もあって、街は静まり返っている。
全ての住宅にはカーテンが閉められ、ひとが住んでいないような雰囲気だ。
“カシャン……”
暗闇から、ガラス質の音がする。
“カシャン……カシャン……”
足音のように、此方へ近づいた。
「誰だ。」
クラウジアは其方を振り向く。
「おやおや。こんな所に、見慣れぬ顔が。」
男の声がする。
「……あぁ、君は“ヴォルフラム”と“クラウジア”か。」
予測するように言った。
すると、淡い光が灯った。
男の傍に少女が居て、その光は少女から出ていた。
纏っているガラス細工がその光を反射させる。
「シエン!」
少女をクラウジアは呼んだ。
だが、反応はなく、人形のように前を見ている。
「シエンに何をした!!」
「……何もしていないさ。少し、利用させてもらっただけさ。」
激昂するクラウジアに男は笑う。
「この世界を変える。穢れた世界を、壊す。」
「“メイヒェン”……といったか。それで、創世主にでもなるつもりか。」
「ははははは!!我々の組織の名こそ知れど、目的を履き違えているようだな。」
男はヴォルフラムに嘲笑した。
「“世界を浄化する”などと唱える宗教じみた団体がいる。としか認知していない。」
その挑発には乗らずに言う。
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