花と闇
シエリアは感情がない目でクラウジアを見た。
「……だから」
そう言って、飛躍し、クラウジアの耳元で言った。
「わたしが、おわらせる。」
男には聞こえてない。
「シエ……」
言葉を紡ごうとすると、シエリアが触れた。
感情がない、人形のような目をしている。
「クララ!!」
愛称でヴォルフラムがクラウジアを呼ぶ。
クラウジアはぐらりと倒れる。
辛うじて、ヴォルフラムが受け止めた。
「もう、だれもころしたくないの……」
そう言った気がした。
「だから、さようなら。」
誰にも聞こえない声音で呟いた。

それからはヴォルフラムもよく覚えていない。
目覚めたのは白い部屋。
気味が悪いくらいに綺麗な環境。
即座に病院だと解ると、点滴を引きちぎるように抜いて辺りを見回す。
「クララ!」
カーテン越しに見える女性の姿を認識する。
「……病室では静かにすべきだ。」
傍らにはシャルドネが居た。
「病人は大人しく寝てろ。看護婦の身にもなれ。」
「クララは?」
「体力が著しく落ちている。」
「それだけか?」
「あぁ。命に別条はない。」
そう言われて、ヴォルフラムは目を細めた。
「事情を話してもらおうか。あの場に、お前とクラウジア……それと、何者が居たのか。」
「あの家族は?」
「全員、死んでいた。お前達が残っているのが不思議でならない。」
シャルドネの言葉にヴォルフラムが何か言う前に、クラウジアが起き上がった。
「……シエンだ。」
「クララ。」
名前を呼ぶヴォルフラムにクラウジアは視線で問題がないと伝える。
「あの男に何かされたに違いない。」
そう言って、立ち上がった。
「だから、私は確かめる!屋敷に行くぞ。」
「証拠が不十分だ。」
「つべこべ言うな!間違っていたらその時はその時だ。」
シャルドネにクラウジアは言う。
「あの餓鬼の隣に屋敷の男が居た。それで十分だ。」
「参考人として任意連行出来る程度だ。」
「では、俺達だけの意思で行く。それでいいな?」
「……止めても行くだろう。好きにしろ。」
ヴォルフラムにシャルドネは呆れる。
「だが、まずは自身の回復を待て。唯でさえ敵わなかった相手にそのままで敵うはずない。」
「構うものか。」
「一刻を争う。」
「もういい。私は何も言わん。役所に戻る。」
聞き入れない二人に呆れて、シャルドネは病室を出ていった。

夜中に屋敷を見張る。
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