私の王子様


「この傷は…僕が子供の頃…あいつに付けられたんだ」


あたしは、自分の心臓の音が聞こえそうな位ドキッとした。


…まさか…


「あいつっ…て?」


タロウは目線をあたしの左手の小指に向けた。


…マサトに貰った指輪を見ている。


「…嘘…でしょ?」


「……信じられないなら、それでもいいよ。だけど、僕もハルカが大事だから…あいつと付き合ってるのは正直…心配なんだ。」


タロウが嘘をついているようには見えなかった。


かと言ってマサトがそんなコトをするとも考えられない。


…だけど、シャツの隙間から覗いた傷は、余りに生々しくて…。


気が付くとあたしは泣いていた。


< 111 / 206 >

この作品をシェア

pagetop