転がる星
「お前今日俺んち来い」

 突然土田からお呼びがかかった。

「え?なんで?」

めんどくさそうにカバンを肩にかけながら奴は言った。

「少し考えればわかるだろ」


いや、え?

土田家の呼び鈴を鳴らすのは小学校以来だ。

「はいはーい」この声を聞くのももちろん小学校以来。

「あら、あら、あらぁ!」

土田のお母さん。小学校の時は「あら」は二回だったが今回は僕の来訪が稀なせいか一回のおまけつきだ。

昔は毎日のトイレと変わらないぐらいの頻度で訪れたこの家も今じゃさっぱりめっきりだ。

「お久しぶりです、おばさん。久範君いますか?」

いることはわかっている。早く呼ぶのだ。

「大きくなって!大きくなってぇ!男前になったねぇ~」

そんなこともわかっている。早く猿を呼ぶんだ。
「久範!ひさのり~」

「あぁ!部屋入ってきて!」
気だるそうに答える息子。
< 25 / 200 >

この作品をシェア

pagetop