君の全てが欲しいんだ
「じゃあ、…お言葉に甘えて…。」
「何だよ、それ。
こういう時に、遠慮なんかいらないでしょ。」
「ごめんね。未来くん、用事、あったんでしょ?」
「ああ、ちょっとしたヤボ用だから。
全然、気にしないで。それにもう、…済んだし。」
「あ、そうなの?」
「あ、車、こっち。」
ふわりと笑った顔が、付き合っていた頃を思い出す。
何だか、―――。
急に恥ずかしくなっちゃって、俯いた。
濡れてぴったりと張り付くTシャツが、艶めかしく感じられて。
借りたパーカーを、ぎゅっと掴んで、身体を隠す。
そんな私を、クスリと笑って。
「駐車場、この近くだから。」
傘を差しながら、未来くんは私の肩に手を回した。
背が高い彼に寄り添うようにくっついたまま、一本の傘に二人で入って歩く。