君の全てが欲しいんだ
ベッドから起き上がり、静かに部屋を出た。


廊下の向こうに、灯りが見えて、そっと足を忍ばせる。



「…あの、…。」



その先は、またさらに広いリビングだった。


真ん中に配置された、大きなソファに座った人影が、ゆっくりと振り返る。



「気が付いたの?」


「…っ、やっぱり未来くんち…?私、どうしてここに……。」


「車から降りる時に、貧血になったみたいでさ。

ちょっと頭、ぶつけたんだ。

そのまま気を失ったから、とりあえず僕の部屋に運んだんだけど…。」


「嘘っ!!ごめんなさい。私、全然、覚えてなくて…。」


「あの、ちょっと…。

びしょびしょだったから…。

着替えさせてもらったんだけど…。

あのっ、風邪ひくと、いけないし…。」


「あー、……。」


「いや、見てない、―――。

見てないよ?

なるべく見ないように…、心掛けたから。」



少し赤くなって逸らした視線が、何だか可愛く見えた。
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