シーソーゲーム
 それは見るからに明るく平和な青い空が広がっている四月の初め。俺とミズキは土手に寝転がっていた。学校の帰りであった。俺たちは一人を待っていた。いつもここで待っている。昔から、今まで。風が草の上を駆け抜けた。


 ここから話し始めるのは別にいいのだが、ちょっと早すぎたかもしれない。もう少し戻れば、もしかしたらこの話が分かりやすくなるかもしれない。俺がまだ家から学校に向けて出発するところからだ。これが俺の冒険と夢のような世界を信じ始めた出発点だった。


 俺はその日が始まってから、憂鬱でしょうがなかった。いや、憂鬱だと決まっていた。高校生活の一年がもうすでに終わってしまい、口を開けて過ごしていたら、気付かないうちにもう二年目の初日だ。ついこの前に新年を迎えたと思っていたら、今度はまた新たな一年が始まることに、嫌気がさしていたからというのもある。そんなのも結局は、学校に行きたくないという念であることには間違いないだろう。

 家を出て、自転車にまたがると、特にすがすがしくない空気が待っていた。空には雲が覆っていたのだ。この雲は俺の憂鬱度をさらに上げたに違いない。春休みの間に何も変わらない道、店、家を見て走るのは一年の経過から苦痛になっていた。まったくもってこの一年、楽しいことなんてなかったと思っていた。地味な疲れが蓄積され、翌月に借金が繰り越されたような気持ちであった。

 その学校までの道、友人はともかく、知人さえも会わなかった。そんなに遅い登校か、もしくは早い登校だろうか。自分にとっては十分に早いと思っている。

 ゆっくりと進む自転車に対して、車は俺の横を次々に飛ばす。危ない運転だと分かっているのか、この町の教習所の制度を疑った。

 土手の道を走っていると、端に咲いている春の植物が目に付く。よく踏まれている。雑草はなぜ踏まれてもめげないのか、俺には到底分からないことだ。
< 104 / 214 >

この作品をシェア

pagetop