シーソーゲーム
 しかし不思議に思った。こんなに上手くことが進む人生があっていいものか。今がピークなら間違いないことだと思うが、別に不安になる。

 だがそんな不安も今が楽しくなるあまりに忘れてしまい、どうでもいいことだとも思ってしまう。今が楽しければいいやという精神で、ついつい遊びを繰り返す毎日。本当にこんなのでいいのだろうかという日々。天の神様に感謝する日々。

 どうやっても変わらない日々は続いた。

 そんなある日、さらに楽しくなりそうな企画が持ち込まれた。毎年恒例の球技大会だ。テスト明けに行う行事だ。本当の目的は採点疲れに休みが欲しいということだという先生たちの勝手な意見なのだが、授業がないならこちらも楽だ。

 こう毎日楽しいのに、追い討ちをかける楽しさがあっていいものだろうか。

 しかもこの球技大会は毎年行われているものとは違い、今年から追加のルールが起用される。それは男女混合ルール。すべてのスポーツに男女を必ず入れることとなっている。

 それは私も望んでいたことだ。リョウやミズキとまた一緒に野球がしたい。その思いが通じたような気がする。小学校、中学校と野球部に入っていた私にとっては、これは非常に嬉しいことだった。今まで女と言われて疎外されていて、今回ので自由にできるのが、私にとって世界一の幸福だ。

 私はもちろんチームに加わった。リョウとミズキも一緒だ。これでまた一緒に野球ができる。

 あらゆる人材の個性豊かで面白いチームができた。これでどこまでいけるか。

 苦渋の末の野球はどう楽しめるか。私にとってはそれだけが楽しみだった。


「私たちのチームだけね、やっぱり…」

 私たち以外すべてのチームに共通するのは先発が男子だということだ。

「やっぱり体とか気にして出たくねえんじゃねえの」

「いや、戦力外通告かもな」

 二人はけらけらと笑っている。私はそれに耐えかねた。

「何言ってんの。それ、私に対しての挑戦状?」

 女をのけ者扱いにはされたくない。そんな思いで言ってやった。

「いや、そんなんじゃねえけど」

「絶対挑発してる。もっと口を慎みなさい」

「悪かったな…」
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