シーソーゲーム
 私たちはその日、家に帰る前にカラオケに寄った。今日は疲れたけれど、もっと一緒にいたいと思った。楽しみたいと思った。今日は特別だ。朝まで歌い明かそう。だがそんなお金も時間もなく、二時間でカラオケを後にした。しかしいつもより長く楽しめたような気がする。四時間ぐらい、歌ったような気がする。

 それはともかく、楽しかったことには変わりはない。

 その帰り、別れのY字路でミズキと分かれ、リョウと一緒に帰った。やっと一緒になれた。最近、テストだか、家庭の事情なんかで、リョウは直接家に帰って行った。だから今日はチャンス。

 公園の脇を通っている時、私は決心をした。

「ねぇ。ちょっと寄ってかない?久しぶりにさ」

 私は先行して公園に入ると、リョウはしょうがないなというような、不満そうな顔でついてきた。

 すっかりさび付いた鎖の、昔から座り慣れているブランコに座った。もうすっかり鉄のにおいが強かった。いつも私が向かって左で、右がリョウのこいでいたブランコだった。

 リョウもブランコに座り、一息ついた。

「久しぶりだね。この公園も、十年前までは新装開店みたいだったのに、今じゃ錆び付いたオンボロ公園だね」

「そうだな。そういえば、すっかりこの公園にも来てないな。前に来たのはいつだったかな…」

「四年前ぐらい…かな。何で来たのかしら?」

「そういえば…そうだ。お前が卒業式の日、タイムカプセル埋めるって言ってたじゃないか。もう忘れたのか」

「ありゃ。そうだっけ。埋めた場所、覚えてないわ」

「だめだこりゃ」

 夕陽はまだ沈まないようで、目の前に映った。私の足元まで、紅葉色に照らす。

 私は愛想笑いを続けた。リョウの方もやっと警戒がほぐれたような感じで笑っている。

 愛想笑いの反面。今、私の鼓動は速くなっている。言おうか、言わないか、どうしようか。だが言おうと思う。

「ねぇ、リョウ…好きな人とか、いんの?」

「あん?いきなりどうした、お前」

 まったく動揺してないようで、相変わらず幼馴染視だ。

「いや…高校生なんだから、そんくらい、いるでしょ。もう一年も経つんだよ」
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