シーソーゲーム
 ため息をこぼし、私はただ真っ白で純白な天井を見続け、ただただ、大きく深呼吸をするのだった。


 新学期が始まると憂鬱になる。それは学校があり、その中に勉強をせねばならぬ時間というのがあるからだと、決まって誰もが口をそろえる。

 そしてリョウとももちろん会う。冬休みはあれっきり、リョウとは会っていない。まだ謝ってもいないし、未だに気まずい雰囲気でいた。

 リョウとは挨拶程度の付き合いが一週間ほど続いた。それを見ていたミズキやミズはどうしようもない空気にただ狼狽して、なるべく射程範囲内には入らないようにしていた。

 そんなある日のことである。その関係を保ったまま二月に入り、リョウは私のことを誘った。約一ヶ月ぶりに話したわけだが、質素な会話だった。

 とりあえずリョウは学校帰りに私を誘い、ひとまずカラオケに行こうと言った。予定はないらしく、行き当たりばったりだった。ミズキらはいいのかと尋ねると、いいと言う。そしてカラオケに行ったのだが、リョウの声には張りがない。何と言うのか、元気がない。それに本調子ではなく、どことなく緊張しているように思える。

 カラオケを出ると、もう辺りは暗かった。冬の夜は早い。土手の上を自転車で走っていると、道は狭いし、川沿いなので肌に当たる風は寒い。

 そこでリョウは止まり、土手に座りだした。

「ほら…横に座れよ」

 私は横に座り、橋の上のきれいに流れる流れ星を眺めていた。それは満天の星。冬の空はきれいで清々しくて、気持ちよかった。

 リョウは土手を下り、川に向かって石を投げ出した。一回、二回、三回と跳ね、川に散っていった。リョウは時計をちらちら気にしながら、石を投げ続けた。しばらくするとまた土手を上がってきた。

「行くぞ」

 そう言って先導すると、果たしてどこに連れて行かれるのかと不安を混じりながら、やや冒険感覚で楽しんでいた。リョウから誘い、リョウに先導してもらうのは、幼馴染人生で初めての体験であった。

 商店街を通る時、すでに閉めている店は多数あった。まだ開けている店はあったが、人は外に出てきていた。駅の前の噴水ももう水溜りになっていて、駅の前はすっかり行き交う人はいなかった。私はリョウの後を追うまま、いつの間にか学校に導かれていた。
< 94 / 214 >

この作品をシェア

pagetop