シーソーゲーム
 学校の正面を通り過ぎて、リョウに導かれるまま、学校の裏側に自転車を止めて、壁も植物もないところから侵入し、しかも目の前のドアは開いていて、その奥へと消えていった。

 私はためらうが、リョウに手を引っ張られ、中に入ってしまった。

「ここ…知ってっか?」

 リョウは冒険心旺盛な子供のように、はしゃいでいるようであった。

「ちょっと…やばいよ…」

 私の心の中で葛藤は始まっていたが、リョウのほうが一枚上手だった。

 暗い廊下を通り、避難のぼんやりとしたライトがゆらめいている。月明かりに照らされた階段を駆け上がり、誰にも見つからず、リョウにリードされたまま、屋上への扉を開いた。

「きれい…」

 今にも届きそうな星だった。目もくらむような数に、見惚れていた。

 リョウは私の手を離し、少し先を歩いた。私も少し着いていった。

 そこで、リョウは突然振り返り、私の肩を持った。そして力を入れられて、少々痛かった。だが我慢しようと思った。あの時のことを思い出しだのだった。もう、二の舞なんかにして堪るか。

 そしてあの後に考えて、考えて、たった一つ、辿り着いた答えがあった。もう一度、告白しよう。まだもらっていない返事を、自分から貰いにいこうと考えた。

 だがリョウは先に言った。

「俺…ちょっと不器用だけど…」

 そこまで言うと、前も同じように口をつむいだ。何を言うのか期待していたが、リョウの口は止まったままだった。

 だから私は自分から言い出すことにした。

「私…私…」

 私はあの時のように、すらすらと言い出すことができない。私の何かが、それを阻止しているのだった。

 そして脳裏に横切る、一つの顔。ルイだった。優しく微笑む顔。これでいいのか。本当に。私が神であるから消えた彼女。おかげでライバルなんていなく、ことは淡々と進んだ。しかしこれで本当にいいのだろうか。

 私はできない。告白なんて、ましてリョウからの告白も受け付けたくなかった。

 私はリョウを幸せにせねばならない。だがそれは違った。ルイや私ではなく、リョウ自身が自分の手で。それが人生だ。私はすべての間違いを、確かめた。
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