blue moon
何度か電話で世間話をしてたとはいえ
職業も住所もほぼ何も
知らない男の車に乗り
少々緊張していた。

会話もせず
高級車のまどから景色をながめていた。

「今日はおとなしいな。気分悪いんか?」

心配そうにアタシの顔をのぞきこもうとした。

「あのね、今日ちょっとイヤな事があったの」

「そっか。
でも、今から元気になるで!」

青夜は
何があったかは聞かないでいてくれた。

「なんで元気になるの?」

「俺が笑わせるから」

期待していたとおり
青夜から
"優しさ"をもらえた。

下心あっての"優しさ"
かもしれないが
どんな形であれ
今のアタシには
青夜の"優しさ"が
泣きそうなくらいうれしい事だった。


どこへ行くわけでもなく車は走りつづけた。

車内には
アタシと青夜の
笑い声だけがひびく。
< 12 / 202 >

この作品をシェア

pagetop