俺様なアイツのしつけ方。
「この絵の具、間違えて持ってきちゃったみたいだからさ」
「あ、ホントだ。小さいから気付かなかったのかもね」
陽斗が差し出したのは、赤い絵の具だった。
たくさん荷物を重ねてもったことと、絵の具の箱に蓋が無かったこともあって偶然ポケットに入ってしまったのだとか。
「クラスの人困ってなかった?」
琴羽が受け取った絵の具を眺めていると、陽斗がA組を覗き込みながら心配そうに問いかけた。
琴羽も同じようにクラスを眺めながら微笑む。
「全然大丈夫だったよ。何も言われなかったし。赤はあまり使わなかったのかも」
「そっか良かった」
安心したように陽斗が微笑む。
優しい人なのかな、と思った。
「陽斗君は…」
「陽斗でいいよ」
「え?」
「君って呼ばれるの慣れてないんだ」
照れ臭そうに頭を掻く姿が、可愛くてなんだか頬が熱くなった。
いきなり目を合わせることが出来なくなる。
琴羽は、廊下の窓から外を見つめるふりをして顔を逸らした。
「さっきも呼び捨てされてたもんね」
「あぁ、そうだったかも」
陽斗はポケットに両手を突っ込みながら、琴羽と同じように廊下の窓から外を見つめた。