俺様なアイツのしつけ方。


(こいつが学年首席ねぇ…)


回想を終了して、改めて目の前の背中を見つめる。

自分はこいつが苦手だ。

出来れば力なんて借りたくない。

しかし…。


(今の俺には時間が無い。しかも、最悪なことに英語。絶対1限目までに解けるわけがねぇ)


しばらく頭の中で葛藤する。

成績を取るか、プライドを捨てるか。


(〜〜〜…。だぁもぉっ!!)


とうとう決心した陽斗は、体を前に乗り出した。


「なぁ…」

「………」


そっと声をかけるが、反応がない。


「なぁってば…」

「………」

(んだこいつ、ムシかこら)


苛々しながら再び口を開く。


「おい、小宮…!!」

「……?」


ようやく蓮が振り返った。


「俺を無視するとはいい度胸だな、お前」

「は? 何の話?」


きょとん、としている蓮に、陽斗も言葉に詰まる。


「今無理しただろ-が、とぼけんな」

「無視も何も、俺アンタのこと知らないけど」

「はぁ?!」


まさかの発言につい声が大きくなる。


「クラスメートの、しかも後ろの席のやつぐらい知っとけ!!」

「必要ないし」

「まさにこれから必要になんだよ。俺に勉強教えろ小宮!!」

「………」


かなり迷惑そうな表情に変わる蓮。

しかし陽斗は引かなかった。


「俺は里見陽斗!! 覚えたな、よし。その調子で勉強も教えてくれ」

「動機が意味不明」


ため息をついて、再び前を向いてしまいそうになった蓮の肩をがしっと掴んで引き留める。


「ちょ、ガチで頼むこの通り!! 俺このあとの英語当たんだよっ」

「課題ぐらいやってこいよ」

「時間なかったんだよ、俺は忙しいんだ」

「そんなの自業自得だろ」

「そんなこと言うなよっ!! 席が前後の仲だろ、俺たち」

「………、はぁ」


しばらくして蓮がため息をつく。







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