俺様なアイツのしつけ方。


「もちろん、アイツはいつも黙って聞いてくれてたし的確なアドバイスをくれてた。だから俺も安心して話せたんだ」

「うん、分かる気がする…」


琴羽も蓮には助けられた。

未花との仲が壊れかけて、周りが見えなくなってた自分に叱ってくれて提案してくれて、付き合ってくれた。

蓮はぶっきらぼうで冷たいけど、本当はすごく優しい人。


「陽斗はホントに蓮が大好きなんだね」

「あ〜…、うん…」

「?」


何気なく呟いた一言に、陽斗の表情に影が差す。


「…陽斗…?」


窓の外を見ていた陽斗が俯いたので、表情が見えなくなる。

明らかにおかしい。


「あき…━━」

「…ここまで話して今さらだし、琴羽ちゃんには言っとくね」

「え?」


琴羽の言葉を遮るようにして、陽斗が口を開いた。


「俺、今はもうアイツのこと大嫌いなんだ」

「!!」


そう言って顔を上げた陽斗の表情は冷たかった。

琴羽が小さく息を呑む。

今までの陽斗からは想像もつかないくらい冷たい顔に、言葉が出ない。


(怖い…)

「まぁ、ここに入るまで色々あってさ? まさかまた同じ高校になるとは思わなかったけど、よく考えたらアイツの親父ここの理事長だし、まぁこうなってもしょうがないってゆ-か…。ただ、また一人で寂しくやってんのかと思ったらどうやら最近表情柔らかくなってきたってクラスの奴らが話してたから見てみたら、琴羽ちゃんが隣にいたってわけ」

「え、どういう意味…?」

「アイツは昔俺の彼女を横取りしたんだ」

「え…」




━━━ドクン…




背中に何か冷たい物が滑り落ちた。







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