俺様なアイツのしつけ方。
しばらくして、完全に井藤くんが去ってしまってから琴羽は蓮に近づいた。


「れ〜んっ♪」

「おぅ」


タオルを頭に被せながら、蓮が珍しく返事を返してきた。


「手、大丈夫?」

「あぁ、平気」


既に治療をしてもらったらしく、蓮の手には包帯が巻かれていた。

なんだか痛々しい。


「あのさ…」

「ん?」


蓮の腕に釘付けだった琴羽は蓮の声に顔を上げた。


「応援ありがとな」

「え…」

「多分、お前の声が聞こえなきゃ秋夜のこと殴ってたと思う」

「殴っ…!?」

「それで退場…かな」


なんてな…なんて言って、蓮が笑った。


「笑った…」

「あ?」


琴羽の呟きがよく聞こえなかったらしく、蓮が首を傾げる。

蓮が笑ってくれた。


「なんでもない」

「なんだよ、それ」

「お疲れさまって言ったんだよ〜」

「嘘つけ!!」


蓮の笑顔は琴羽だけの秘密。

もちろん蓮にも教えない。

琴羽は悪戯っぽく笑った。






その後、閉会式が行われた。

他の競技の成績も合計した結果、A組が優勝。

景品はこの学校の近くにある遊園地の入場券だった。






そして、その後に行われた打ち上げの席にて。


「蓮さ、なんで最近授業サボってたの?」

「…別に」

「まさか、ビビッてたとか?」

にやにや笑う琴羽を見た蓮は、不機嫌そうに呟いた。

「練習してたんだよ」

「え?」


きょとんとする琴羽。

そんな琴羽を見て、蓮は慌てて話題を変えた。


「んで、お前はどぉだったわけ」

「え?」

「バレーだっけ」


用意されたお菓子を口に運びながら蓮が問いかける。
今度は琴羽が不機嫌そうに答えた。


「結果は聞かないでくれるかなぁ…」

「は?…なん」

「どぉしても!!」

「…お、おう」


琴羽に言葉を掻き消された蓮は、その表情を見て素直に従ったのだった。







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