俺様なアイツのしつけ方。
9時に駅前。

そぉ約束したため、蓮は壁に寄りかかって琴羽を待っていた。


「おせぇ…」


退屈そうに呟く。

携帯を見ると、9時を過ぎてから15分が経過していた。


「この俺様を待たせるとはいい度胸してんな、あいつは」


仕方ない、電話してやっか。


ため息をついて、携帯を開いた刹那。


「蓮、ごめん遅れてっ!!」

「いっ!?」


後ろから突然服を引っ張られて、仰け反った。


「いてぇな、おいっ!!」


腰を擦りながら振り返った蓮は、そのまま固まった。

「…蓮?」


不思議そうに琴羽が首を傾げる。


「…え、琴羽…だよな」

「うん」


蓮の問いかけに首を縦にふる。

すると蓮は口元に手を当て、そっぽを向いた。


「え、変かなっ!?」


そっぽを向かれたことでショックを受けた琴羽は、焦って自分の服装を見下ろす。

水結とお揃いの色違いで買った薄いピンクのワンピースを着て、髪型は水結がセットしてくれた。

琴羽は高校生にしては珍しく黒髪で、肩よりも長いので巻くと大人っぽくなる。

…やっぱ変だった…!?


「あ、あの…」


どぉしたらいいのか分からず、オロオロと蓮に声をかける。


「あ〜…」


やっと蓮がこっちに向き直った。

恥ずかしそうに目を反らして、前髪掻き上げて。


「いいんぢゃね?」


と、一言。

そして琴羽の手を握って歩き出した。


「行くぞ」

「…うんっ♪」


たった一言なのに、それだけで心がホカホカして琴羽は嬉しそうに笑うと、蓮の手を握り返した。









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