俺様なアイツのしつけ方。
「私も帰ろ」


呟いて帰り支度をしていると、教室の扉が開いて一人の男子生徒が入ってきた。

「あ、もしかして」

「?」


席に近づいてきた男子生徒は、琴羽を見るがすぐに支度を始めた。


「小宮蓮くんでしょ?」

「…あぁ」

「私、隣の席になった夏野琴羽。よろしくね」

「あ〜…うん」


面倒くさそうに相槌を打って、蓮はプリントを持った。

「あ、それ。まとめといた…」


―――ガサッ…


「……」


蓮はプリントをゴミ箱に捨てた。

琴羽は慌ててゴミ箱に駆け寄った。


「え、なんで捨てるの!?」

「は?」

「このプリント、私がまとめておいたんだけど」

「…ふぅん」


琴羽の言葉を聞いても、たいして興味を持った様でもなく支度を続ける蓮。

琴羽は蓮に近づいた。


「プリント、親に見せなさいよ」

「なんで」

「先生が言ってたから」

「あっそ」

「あっそって…」


蓮は、鞄を掴むと琴羽と初めて目を合わせた。


「琴羽だっけ? いいこと教えてやろぉか」

「え?」

「俺に関わらない方がいいよ。じゃあな」


口調は優しげだったが、瞳は冷たく影があった。

琴羽は一瞬息を詰めたが、ふと思い出して叫んだ。


「プリントのお礼言ってけぇっ〜!!」


蓮は叫び声を聞いて廊下で立ち止まった。


「はっ…。変なやつ」



入学式。

誰もいない放課後の教室で、アイツと出会った。

第一印象は最悪。



私とアイツの高校生活が始まった。





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