俺様なアイツのしつけ方。
「……」


何が起きたのか分からない。

ただ風がいつもより冷たく感じたのと、心がなんだかもやもやしたこと。

それは理解出来た。


「…おい」


ぽん、と頭に手が置かれた。

声が降ってくる。

でも今は顔を上げる気力もない。


「いいのかよ、このままで」

「……」

「何があったのか知んね-けど…」


いつもは言い返す琴羽だったが、今は違った。

胸の中がもやもやして、蓮の言葉さえ勘に障る。



誰のせいだと思ってるの?


何があったか知らないけど…、?


全部全部…蓮に会ってから崩れていったんだ。




「とりあえず追いかけ…」

「もういいよ」

「あ?」


――パンッ!!


琴羽は蓮の手を振り払った。


「蓮には関係ないじゃん!! 追いかけたってまた突き放されて終わりだよ。蓮に何が分か…」

「…へぇ」


蓮が息をついた。

顔を上げると、両方のポケットに手を突っ込んだ蓮が真っ直ぐ琴羽を見ていた。


「確かに、お前とあいつがどうなろうと俺には関係ねぇよな」

「……」

「そうやってうじうじしてればいい。俺、今の琴羽嫌いだわ」


蓮が扉に向かって歩き始めた。


「そうやって親友失えばいいだろ。意気地無し」

「な、なによッ!!」


――意気地無し


その言葉に思わず叫ぶが、蓮は無視して屋上を出ていった。


「意気地無しで悪かったわね」


琴羽は溢れる涙をぐいっと拭った。










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