俺様なアイツのしつけ方。
次の日から、琴羽は授業以外教室に姿を見せなくなった。

当然心配するのは、比奈と優だ。

心配のあまり、普段話さない蓮に近付いた。


「こ…小宮くんっ!!」

「あ?」


寝ていた蓮が不機嫌そうに顔を上げると、比奈と優が立っていた。


「何か用…」

「あ、あの…」


冷ややかな声に、思わず優を見つめる比奈。

優が頷くと、一度深呼吸をしてから比奈が口を開いた。


「…琴羽ちゃん…知ってますか…」

「「……」」


恐怖からか、うるうると瞳を潤ませ問いかける比奈。

何か物言いたげな優と蓮の思いはきっと同じだろう。

仕方がないので、蓮は息をついた。


「…いや、知りません」


敬語への敬語返しに、思わず吹き出しそうになる優。

しかし、比奈は必死だった。


「あ、ありがとうございました…っ」


勢いよく頭を下げると、慌てて廊下へと逃げていってしまった。


「なんだぁ…?」


不審げに比奈を見送る蓮に、廊下へ向かいかけた優は足を止めた。


「んで、本当は知ってんでしょ」

「……」


頬杖をつく蓮。

比奈に対して随分と男まさりな優を見上げた。


「まぁな。…今あいつもいっぱいいっぱいだろ-から、しばらく放っておいてやって」

「もしかして、未花ちゃん?」

「……」


黙り込む蓮に優はビンゴ、と笑みを浮かべた。


「前は琴羽と一緒に学校に来てたのに最近一緒にいないから、おかしいなとは思ってたけど…」

「あいつ不器用だからな」

「あんたもね」


は、と訝しげに優を見たが、既に廊下へと駆け去ってしまった。


「女子ってやっぱ分かんねぇ…」


呟いて、何気なく窓を見つめる。

曇り空が広がっていた。








.
< 66 / 121 >

この作品をシェア

pagetop