俺様なアイツのしつけ方。
「げ-…」


特に目的も無しに街をさ迷っていると、雨が降りだした。

蓮は近くのコンビニに駆け込んだ。


「あ-…ったく…」


制服についた水滴を払っていると、ポン…と肩を叩かれた。


「?」

「あれ、蓮だよな-?」

「誰」


気安く触られ気分を悪くした蓮は、相手の手を振り払う。


「あれ、覚えてないかな-?」

「……」

「沢柳春也(サワヤナギハルヤ)」

「!!」


耳元で囁かれて蓮は息を呑んだ。


「思い出した-?」

「お前…っ」


胸ぐらを掴む蓮に対して春也はヘラヘラと笑っている。


「なにちゃ-んと高校生なんてやっちゃってんの、蓮くん?」

「お前には関係ない」

「よく言うよな-。昔はよくつるんだじゃんよ」


ぴく、と蓮が反応する。


「俺はまだ続けてんだよね。こ-れ」

「!!」


春也が蓮の前に突き出したのは、小さな袋に入れられた白い粉だった。

慌てて春也の腕を掴んで、下ろさせる。


「なに考えてんだよ!!」

「あれぇ、だめなの?」

「こんなとこで出すな」


蓮に怒鳴られても気にした風でもなく、春也は笑った。


「まぁ、蓮くん。またやりたくなったら俺んち来なよ」

「まだあそこに住んでんのか?」

「まぁね。今日また新しいカモ見っけてさ。女子高生なんだけどね?」

「あっそ」


興味が無い蓮は、春也を解放した。

服についたしわを伸ばしながら春也は、携帯を取り出した。


「これからそいつに会うわけ。…あ、一緒に来る?」

「いい」


こいつと付き合うのはごめんだ、と蓮は鞄を掴んだ。


「じゃあなぁ、蓮くん」

「……」


無視して、雨の中歩き出す。

蓮にとって、春也と過ごした日々は思い出したくない過去ばかりだ。

もう忘れかけていたのに。

蓮は雨の中、わざとゆっくり歩いた。








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